たらいまわし本のTB企画第29回 『酒と本』



やってきました。たら本でございます。
本のたらいまわし企画に参加される方であれば、読書が好きであろうとは、推測ができます。
しかし、お酒については、飲める人もいれば飲めない人もいるわけであります。
僕自身は、アルコールに弱い体質ですが、飲めないなりにお酒に興味があります。飲める方のお酒へのこだわりに興味がありますし、飲めない方のお酒への接し方や酒の席での身の処し方、あるいは酒飲みに対する観察・感想にも興味があります。

お酒そのものを扱ったりお酒が登場するシーンがある本はもちろん、お酒を飲みながら読みたい本、下戸でも読んだらお酒が飲みたくなった本、逆にアルコールの害悪を説いた本等々を挙げて頂ければと思います。
お酒が好きな人も嫌いな人もお祭り気分でワイワイ騒ぎ、この企画を肴に楽しき酩酊気分を味わって頂ければ幸いでございます。
ところで、酒(さけ)とは、正確に言えば日本酒のことを指すのだと思うのですが、今回はアルコール飲料一般と捉えて下さいませ。
また、今回、お題を考案するにあたり、Izumiさんが作って下さった「たら本データベース」を利用させて頂きました。ありがとうございました。



『初秋』ロバート・B・パーカー
僕にとってスペンサーシリーズを読む楽しみは、スペンサーが料理するシーンを味わうことです。腕がたつ上に料理もうまい。そしてスペンサーはアムステルとベックをというビールをよく飲んでいたような気がする。調べてみたらどちらもヨーロッパのビールでした。
そう言えば東部のインテリは、ヨーロッパのビールが好きで、インテリのくせしてバドなんて飲んでたら、冷ややかな目で見られると村上春樹『やがて哀しき外国語』に記されていたような。アメリカ東部は階級性が強く残っているんですなあ。スペンサーはボストンの探偵ですね。
僕はベックは飲んだ記憶があるのですが、味は覚えていないです。
別の作品で相棒(と言っていいのか)のホークがシャンパンをビンから直接ぐびぐび飲むシーンはカッコ悪っ!て思いましたが。




『坂道と雲と』立原正秋
直木賞作家立原正秋の随筆集です。
この随筆集は、文芸批評や、三島由紀夫自害への言及などの当時の話題をとりあげたものと、料理、酒、古典文学、着物、骨董など彼の興味の趣くまま、厳しい視線で対象を見つめていきます。この人、傲慢とも言えるもの言いで物事をバッサリ切り捨てていきますが、三島への“虚構を生きた”云々という言葉は、彼自身にそのまま当てはまりそうです。
ところで立原正秋は、文壇酒豪番付で東の大関とランクされたことがあります。ま、酔狂なお遊びといったところですが、今どきの酒豪と言える作家は誰になるんだろうか、なんて思ったりします。同時にたらまーさんの間での酒豪番付も知りたい(笑)

「日本の酒」と題した文章を抜粋してみます。
「若年の頃、欧米の文学を耽読し、日本の伝統など毀してしまえ、といった時期があったが、私はけっきょく伝統に還ってきた。
これは酒についても言えることで、さまざまの洋酒を飲みつくした後で、私は酒に還ってきた。
米が豊作だときくと私の感情は豊かになる。酌めども尽きぬ深い味、そのまろやかさ、あの色と香、これは日本の風土をぬきにしては考えられない。青春の酒には尽きせぬ思いが残っているが、よわい四十を過ぎた今も、酒なくて何の人生ぞ、といった思いはある。としとともに無常のおもいは募る一方だが、酒が伴侶である点は、今後も変わりそうもない」

次は「秋の酒」より
「~以後、その日の米に困っても酒だけは、良質のものをのみつづけてきた。酒が腸にしみる、という感じを味わったのは、舟の上で獲れたての魚を料理しながら飲んだこのときがはじめてである。いらい酒は私の伴侶となった。
紅葉を焚いて酒をあたためる風流を解したのも早い時期だった。春の花見酒は山桜の下がいちばんよい。秋の酒というと紅葉を焚いて酒をあたためるのがいちばんよいが、これは同じ火で松茸を焼かねばおもむきがない。栗を焼いて肴にしてもよい」

いやあ、キザですねー。僕は彼のこのキザっぷりがけっこう好きです。でも酒の肴に栗って合うのかなあ?マロン・グラッセじゃだめかな。





『風の歌を聴け』村上春樹
僕は、小説においてお酒を飲むシーンがある場合、それをどのように描くのかということに少し興味があります。酒ってけっこう重要なアイテムだと思えるのです。
読者には、未成年もいればアルコールがからっきし駄目な人だっているわけで、そういった読者にも酒、あるいは酒場の雰囲気をうまく伝えることができるかどうかというのも、表現力の巧拙を表しているのかもしれません。
で、僕はこの小説を二十歳前後の頃に読みました。その頃は、今よりさらにアルコールに弱くて、缶ビール一本で頭がぐらぐらして酒なんてまずいもんだよなあと思い続けていたのですが、この小説に出てくるジェイズ・バーでお酒を飲んでみたいと強く思わされたことを思い出します。





『テーブルの雲』林望
リンボウ先生こと林望さんは、まったくの下戸であります。しかし酒を飲むことは出来なくても、付き合い上、酒の席につくことは度々あり、その酒の席においてシラフのリンボウ先生が人々の酔態ぶりを冷静に観察した感想を述べています。
酒飲みには、上品、中品、下品の区別が截然としてあり、日頃どのようにエラソーなことを言っていても、その酔態により、本人の人間性が露呈してしまうということを述べています。
そしてリンボウ先生の二人の恩師を挙げて、飲めない人間に無理に飲ませることなどしないでかつ飲めない者への配慮も忘れず、彼のお二人こそ上品中の上品の酒飲みだと言っていますが、同時にこのような上品の酒飲みの存在は大海の一滴に過ぎないと記すのであります。
うーむ、僕は今の歳(34歳)になってようやく缶ビール一本を飲めるようになったくらいですが、自分がどの位置の酒の飲み手であるのだろうか、と思ってしまいます。まあ、元々飲めない人間なので、人に無理にお酒すすめることはありませんが。






『アマニタ・パンセリナ』中島らも
睡眠薬、シャブ、アヘン、有機溶剤、幻覚サボテン、咳止めシロップ、毒キノコ、ハシシュ、大麻、LSD等々、様々なドラッグについて書かれたエッセイですが、この本の最後の章は、アルコールについて割かれています。
アルコールは、一度の飲用の害悪が少ない分、その中毒性にとらわれればじわじわと確実に精神と体を蝕んでいきます。日本では、未成年でも簡単に酒類を手に入れられ、あらゆる場所でアルコール類の自動販売機を目にすることができます。
アルコールってものの害悪を知りたい方であれば『今夜、すべてのバーで』も同時に読まれることをお勧めします。依存症って恐ろしい。
それにしても・・・。
らもさんの死に方を聞いたときは「くそっ・・・バカヤロー!」という言葉しか思い浮かびませんでした。
ご冥福をお祈りします。





『夏子の酒』尾瀬あきら
最後はマンガでございます。
僕は、アルコール類の中では日本酒が一番好きですが、このマンガがその原因かもしれません。あ、でも中学校の図書館になぜか日本酒の本があって、それを眺めながらうっとりしていた思い出があります。でも酒を飲める歳になってから、実際飲んでみると、アルコールにとことん弱い自分に気づかされたのでありますが。
ちなみに一番好きな日本酒は、菊姫の山廃純米酒というとても華やかであと口の美味しいお酒であります。
僕はこのマンガを知る前に漠然と職人的な仕事がしたい、と思い込んでいて、このマンガに出会ってコレだ!なんて思いこんで、とある酒蔵に電話して蔵人にして欲しい、なんてことをしたことがあります。アッサリ断られました。うーむ、若いってバカですねえ。酒を飲まずとも人生に酔っていたのかもしれません。


と、以上のようにマンガも含めて六冊ほど挙げさせて頂きましたが、今回のお題はマトを絞りすぎたと言いますか、興味のある方と無関心な方がはっきり分かれてしまうお題であろうかと思います。僕自身がアルコールに弱い上に、お酒の銘柄なんかにも全然詳しくないのにこのようなお題にしてみました。パッと閃いた思いつきだけのテーマでありますが、参加して下さる方がどのような本を挙げて下さるか楽しみです。
さて、次回の第30回目のたらいまわし企画の主催者でございますが、是非overQさんにお願いしたいと思います。どうか、どうかなにとぞお引き受け下さいませ。

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by kyokyom | 2006-12-01 01:00 |

『マッピー』用ボーダー

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